早いもので2020年も半分を過ぎた。だいたいこの時期になるといつもインターネットがざわつく。「【速報】今年、もう半分終わる」みたいなツイートは正直もう見飽きているのだが、一年の半分が過ぎたという事実に対して年々「もうそんなに経ったのかよ」感は強まっている。
時の流れの早さというのは、きっと一生廃れることのないコンテンツなのだろう。
ところでインターネットは広いもので、この時期になると音楽が好きな人たちがこの半年にリリースされたアルバムでよかったものを列挙しだす。各人の上半期ベストアルバムリストを見て、「それよかったよね」「それ知らないなー今度聞いてみよ」「自分はそれあまり好きじゃなかったな」という感想をめぐらせるのである。
ということで、自分も選んでみました。このブログで自分の趣味についても書いてみたかったんですよね。
洋楽邦楽まんべんなく選出してみました。自分はあまり新しい音楽を追うタイプではないと思っているので、選ぶやつも全然目新しくもなんともないと思うけど。短いですが音楽レビューとかも初めてちゃんと書いてみました。やってみたけどマジで難しい。割とインターネット上の既存のレビューとかも参考にしてたりするのであまりオリジナリティ無いかもしれない。読めたもんじゃなかったらごめんなさい。。
9枚選出したが、ここではその9枚のうちで特に優劣はつけないので、リリースされた順に紹介していきます。
それじゃあ行くぞー!
①Aiming For Enrike "Music For Working Out"
ノルウェー産ベースレスツーピースインストバンド。「ワークアウトのための音楽」と称されたその音楽は、ギターとドラムのみながらルーパーが多用されており、派手な爆発力よりも這うように迫ってくるような独特の重厚感が漂っている。計算されつくした小刻みに刻まれるギターリフやドラムの16ビートが聞いていてとても心地よい。ちょっとしたことでは動じないようなこの”強者感”が筋トレをするときに聞く音楽としては案外ピッタリなのかもしれない。そう感じるのは俺だけか。ちなみに収録曲の"Ponzu Saiko"というタイトルの意味は読んで字のごとく「ポン酢最高」らしい。どこでポン酢を知ったんだよ。
②GEZAN "狂(KLUE)"
一聴してすぐ「やってくれたなあ」と感服した。bpm100で統一され、全曲シームレスにつながったこのアルバムは、サブスク全盛の時代でアルバムを通して聴くことに意味を持たせた作品の一つだ。そのうえケチャやガムランの要素を内包したトライバルなグルーヴに、アングラかつ過激なバンドサウンドが加わり、全編つながっているのに一切のゆるみを感じさせない。”赤曜日”の緊張感とカタルシスは本当にすさまじい。冒頭の語りにもあるように、この作品ではレベルミュージックとして現代社会や政治に警鐘を鳴らしながらも、そんな時代に我々はどう生きるか、この時代の幸せとは何かを再定義させ、革命を要求する。聞くものの覚悟が問われる傑作である。
③Tama Impala "The Slow Rush"
現代ロックシーンで最も勢いのあるオーストラリアのサイケデリックバンドの4thアルバム。前作の作風を踏襲しつつ、"Tomorrow's Dust"などのアコースティックな曲や"Is It True"のようなファンキーな曲も含めよりバラエティに富んだ作品である。曲名でも見られるようにこの作品は時の流れについて思いをめぐらしているというが、サウンドに関しては時にやりすぎとも言えるくらい歪(ゆが)んだシンセサウンドで、もはや時の流れを忘れさせるくらい頭をくらくらさせるサイケを演出している。延期になったフジロックフェスティバルで引き続きヘッドライナーとして出演予定なので、これを夜の苗場で爆音で聞きながら昇天したいな~。
④Grimes "Miss Anthropocene"
カナダの女性エレクトロミュージシャンの5th。あのイーロンマスクの現パートナーでもある。マネージャーであり友人であった人物が亡くなったことが影響し、前作までにあったカオティックながらも露骨なポップネスは薄れ、よりシリアスでダークなエレクトロポップになっている。曲名も"Violence"、"My Name Is Dark"、"Delete Forever"などネガティブなワードが浮かび、死や悲しみなどの暗い感情を浮き彫りにしている。一方で、"We Appreciate Power"ではバキバキのサウンドにのせて人類の歴史を凌駕するテクノロジーへの憧憬が歌われている。「スピリチュアルな視点から見た近代性やテクノロジー」とか「擬人化された気候変動の女神について」をコンセプトとしてこのアルバムは、パーソナルな憂鬱のみならず社会問題や環境問題にも目を向けさせる作品に仕上がっている。
⑤The Chats "High Risk Behavior"
こういうガキくせえ雑なパンクロック(誉めてる)がまだ生き残っててよかった。オーストラリア産のスリーピースなのだが、chatという単語はシドニーではshit(クソ)という意味でも使われるらしい。一貫してアホな姿勢が最高だ。サウンドも超シンプルなのにとてもキャッチ―。Dead KennedysとかStiff Little Fingersあたりが好きなんだろうなというのがもろに分かる感じがするし、「楽器持ったしとりあえず何かしようぜw」感が非常にいい。凝った曲が流行りがちだけどバンドってもっと適当でもいいんだよなと(そこまで言うと失礼か)改めて感じさせる作品である。
⑥どんぐりず "baobab"
名前や風貌から玄人好みのコント職人みたいな感じがするが、正体は群馬県在住の音楽ユニット。前作から一転してヒップホップに傾倒したこの作品では、グルーヴィかつ音数はそこまで重ねない渋いサウンドに言葉遊びが重視されたナンセンスなリリックがのっかる。DIY感あふれる安っぽいPVや本人たちのキャラも相まってコミックバンドの印象が強いが、色物好きだけでなく、おしゃれなシティポップなどの音楽が好きなリスナーや洋楽好きなどにもウケる間口の広さもこの作品は持ち合わせている。
⑦Age Factory "EVERYNIGHTS"
さっきバンドはもっと適当でいいとか書いているが、最近の日本のロックシーンで一番説得力のあるバンドサウンドを出しているのは彼らなのではと個人的には思っている。スリーピースで鳴らすことが出来る等身大のサウンドから、"CLOSE EYE"のような相当なヘヴィネスまでも演出している。しゃがれた声で絶叫する反骨精神むき出しなボーカルもあり、やってることは全く違うが何だかミッシェルガンエレファントのような雰囲気を感じるのである。この音に何も感じるものが無いのなら、あなたはロックとは無縁だと思ったほうがいい、みたいな。それは流石に言いすぎだけど。それくらい”バンドで鳴らせる音”をアティチュード含めて出していると思う。
⑧藤井風"HELP EVER HURT NEVER"
文豪のような風貌と幅広い音楽性から何だか大正から令和まで一人で横断している人って感じがする。ブルージーかつアダルトながらもインターネットスラングと備後弁が炸裂する「何なんw」とか、昭和な香りがプンプンする「罪のかおり」とか、絶対これ何かのドラマ主題歌だろって思わざるを得ない「優しさ」とか。というか来年までに本当にドラマ主題歌とかやってお茶の間に浸透して紅白に出ます。これはマジです。何ならルックスもいいので確実にKing Gnuの常田大希くらいにちやほやされます。もはやもうされてます。デカい新人だな。
ところで彼、出身は俺の実家の最寄駅から30分ほどでいける岡山の里庄町だし、誕生日もぴったり俺の一週間後だしって…。こんなに近い環境にいてこれだけ差が出るなんて…何なんw
⑨Arca "KiCK i"
6月の終わりにこの作品がリリースされたのだが同じ日にHAIMとKhruangbinの新譜もリリースされてもう全部聞くのに忙しかった。全部選びたかったけど今回はあえてこれを選出する。変な音楽が好きなもので…。
ベネズエラ出身ロンドン在住の彼だが、その風貌やアートワークからうかがえるように相当アバンギャルドなエレクトロサウンドを生み出している。しかしこれでも前作よりは幾分キャッチ―で聞きやすくなっており、彼がサウンドをプロデュースしたこともあるアイスランドの歌姫Bjorkが参加した"Afterwards"なんかは息をのむ美しさである。"Machote"なんかもう割と歌ものとして成立してるし、彼の音楽の新境地ともいえるだろう。もっと変な音楽が好きだったり、Arcaの本領を覗いてみたくなったら、別の作品を聞いてみることをおすすめする。
並べるとこんな感じ
他にもたくさんいいアルバムはあったけど、僕の少ない語彙力ではこれ以上はもうキチイのでこのへんでやめておきます。
あと個人的に2020年の音楽ニュースでデカかったのは年明けと同時に発表された東京事変の再生ですかね。EPだったんで紹介はしなかったですけど、新譜も最高でした。ライブ決行して叩かれてたの見て悲しくなりました。
早くライブとか開催できるようになってほしい。